コラム 教育本
モンテッソーリ教育を知るということ
モンテッソーリ教育を学ぶために、何度も何度も読み返している本があります。
そしてこれらの本を読んだことで、ある変化が起こりました。
それは、子供をよく観察するようになったことです。
常識や他人の目に惑わされることなく自分の目で目の前の子供をしっかりと見てみます。
すると今まで手を焼いていた子供の行動に対し、「できるようになりたいから」「もっとよく知りたいから」そんな思いでこだわっているということに気がつきます。
子供の見方が変わることで、いままでの不安やイライラが消え、余裕をもって子供を受け止められるようになります。
そして適切な環境を整える(=子供を援助する方法)ことで子供は伸び、子供の可能性を信じることができます。
整った環境下では、子供は生き生きとし、大人もゆったりとします。
すると、お互いの関係が良い方向に変わっていきます。
紹介する本では、「ひとりでできるように手伝ってください!」と叫ぶ子供の自立への強いあこがれ(子供の生命力)を助けるモンテッソーリ教育について知り、子供の行動の原動力についての知識を得ることができます。
さらにこれらの本を読むことで、子供を見るということや観察の仕方( どのような態度で見る、なんのために見る、どこを見る)を認識でき、子供の意思やそれにともなった姿を正しく見ることができます。
すると、子供への「抑制」が「手助け」へと変わっていくのです。
おすすめの本①「ママ、ひとりでするのを手伝ってね!」
まず1冊目のおすすめの本は、モンテッソーリの発見や子供の行動の本質がよくわかる こちらの本です。
モンテッソーリの幼児教育
ママ、ひとりでするのを手伝ってね!
著者 相良敦子
出版社 講談社
発売日 1985年06月
相良敦子先生について
この本の著者である相良先生は、日本にモンテッソーリ教育を広めた代表的な方のひとりです。
そして、子供の成長を導く保護者や保育者の助けとなる著書を多数出版している方です。
相良先生の著書では、モンテッソーリ教育の中にある教育の真理と、誰もが家庭の中で応用できる子供の本質に基づいた援助の仕方という観点で 丁寧に子供とのかかわり方への大切なメッセージが記されています。
日常生活での自立や人格形成につながる
モンテッソーリ教育のおもしろい点は、モンテッソーリ教育は「日常生活」を使う教育であるということです。
モンテッソーリ教育では、日常生活を教材に使い、日常生活の何気ない行動をひとつずつ丁寧に分析し、その動作を子供に正確に教えていきます。
日常生活をひとこまひとこま教えてもらい、繰り返し熱心に励んだ子供は自分でできるようになるだけでなく、どんな状況に出合ってもその状況を判断し、自分の力を総動員して、臨機応変に対処していくことができるようになっていきます。
それは、モンテッソーリ教育が自分を育てる力(自己教育力)が発揮される構造を見極めた教育法であり、幼少期にこの自己教育力を繰り返し身に着けることが人格的な成長や生涯教育の土台を培うことにつながるからです。
また、子供が日常生活の中で、はさみで紙を切る、ひもを切る、包丁で野菜を切るといったことをやりたがる場面があります。
はさみや包丁を使うためには、目と手の協応作用がよくでき、大人に正しい使い方を教えてもらい、自分で練習しこつを覚える必要があります。
にもかかわらず、大人はそのプロセスは行わずただ「危ない!」と妨げてしまいます。
しかしこの本を読むと、大人は子供の「わたしがひとりでするのを手伝って!」という欲求に応え、子供が自分の仕事を自分で実行できるように援助すべきであるということに気がつきます。
「なぜ、夢中になっているのか?」「なにをしたいのか?」「どこで困っているのか?」
このような子供の自立への願望をどのように聴き取り、それに応えるかが述べられています。
おすすめの本②「子どもは動きながら学ぶ」
2冊目のおすすめの本は、子供とのかかわり方のこつがよくわかる こちらの本です。
子どもは動きながら学ぶ
環境による教育のポイント
著者 相良敦子・池田政純・池田則子
出版社 講談社
発売日 1990年02月
この本では、モンテッソーリの原理を出発点として子供を良く観察し、そこから学び得た子供の自立に向けたかかわり方のこつや援助の事例が具体的に説明されています。
子供がひとりでできるようになるために力を発揮し発展していくことができる環境をどのように準備し、どのように援助していくかが述べられているのです。
動きながら学び取る時期への援助
子供の自立には、「これをしなさい!」とただ自立を促すのではなく、自立していくプロセスで、やり方を正しく大人が示して援助することが必要です。
やり方を知ることは、子供が環境に関わるための方法になります。
なぜなら、子供は自立のために動き方を自分のものにする方法を知りたがっているからです。
そのため、どう動けばよいかを大人が正確に示すことが大切です。
子供は環境に関わりながら、活動自体によって動き方を学ぶと同時に、学び取る力を育んでいるのです。
日常生活の中で、「危ないから」「時間がかかるから」とつい妨げてしまうことがよくありました。
しかし日常生活の様々な場面で、子供は整った環境を求め、どうやってやるのかを知りたがっているということをこの本から気づき、子供がなにかやりたがっている時には手を止めてよく観察するようになりました。
そうすると、朝起きて顔を洗う時に蛇口を自分でひねるために手が届く踏み台を必要としていること、適切な水の量を出す蛇口のひねり方を知りたがっていること、顔をふくタオルが手の届く位置にあることが大切であり、そのタオルをきちんとタオル掛けに掛けるやり方を教える必要があるということが見えてきました。
また、環境を整えることは子供がひとりでする手助けになるということを知り、私は息子のトイレトレーニングにも活用しました。
すると子供は、いつも決まった場所に自分の使うものが手の届くところに用意されているという安心感を持って励むことができました。
そして、手助けというとつい代わりにしてあげたくなってしまいますが、正確なやり方を示しその後は見守って待つことで、子供が安心して取り組む雰囲気を作ることができました。
モンテッソーリ教育の原点
モンテッソーリ教育の原点として子供が変わるという事実があります。
子供が変わるとは、子供の精神が安定して穏やかになり、日常の行動が落ち着いた状態になるということです。
モンテッソーリ教育ではそれを「正常化された」と言います。
心と体を一つにして活動する機会を得た子供が、その活動の中で自分の精神と肉体のリズムを取り戻すことによって抱えていた問題が解消され、本来の姿になったという意味です。
上記の本でも子供が変わった事例や、その子供が通った人格が育つ道筋などが詳しく述べられています。
子供の行動には意味があるということ、子供が充実したエネルギーを得ると良い状態に変わるという姿。
これらを知ることは、きっと子供と向き合い試行錯誤する日々の中で、大きな力になります。
*以下の記事では、日常生活の中でみえた子供の変化について記載しています。